Ritche Blackmore's 74Strato Scalloped Fingerboard

Scallppの語源そのものはホタテガイ。
貝で削り取った様な、と言う意味でスキャロップと言われたかと想像します。
そのスキャロップ指板自体はリッチーが考えたものではなく、古く南インドにて発祥。
ベトナムギターと呼ばれる物も深くスキャロップされています。

さて、

1980年頃だったろうか、YAMAHAがSCというモデルを使い、スキャロップ加工をし、リッチーに使ってもらうと言う企画がある
と書かれた紹介カタログを持っていた。今は紛失してしまったが、そのカタログでは、スキャロップの掘方について語っており、

●一番深い部分がブリッジ側寄り(インギーはフレット間センター)
●6弦よりも1弦を深くしている、
●リッチーは手作業で紙やすりで削った物しか許さない

と、掘り方図や説明が掲載されていて、今でも記憶している。

30年近く前、実際にネック1本を犠牲にしてその通りに作った事があるが、
「スキャロップの効果は指板に押し付ける側のビブラートが深くかけられる」
と書かれていた記事を試した所、実際にはその効果は思ったほど得られず、一気に失望した。

今考えれば、どちらかと言うと、
低い弦高でもしっかり指先が弦を掴み、ヴィブラートやチョーキングがかけやすい。
そちらが狙いだと思われる。(リッチーのギターテク、ドーク氏も同様のコメントを残している)

当初、リッチー本人が100番の紙やすりでゴリゴリと削っていたそうだ。
その超粗い仕上がりを見たドーク氏が、私に綺麗に仕上げさせてくれないかと打診。
リッチー本人は、インギーモデル同様フレット間センターを掘っていたが、
ドーク氏によるスキャロップは上記3ポイントを守ったスタイルに変更した。
それを気に入ったリッチーは、以降、ドーク氏にスキャロップを任せる事になった様だ。



日本公演の際に、日本のショップがリッチーの為にスキャロップ加工をしたストラトを準備。
リッチーはそのスキャロップを担当した人を呼び、指先のマメをチェック。
きちんと手掘りした事を確認したそうだ。(友人がその本人から聞いた話)

今回、それに倣って加工したスキャロップはこんな感じだ。




実際に掘ってみると、その深さに驚く。いつまで掘っても同じ雰囲気には到達しない。
最初の荒削りは道具を使わせてもらったが、確かにオール紙やすりではマメができるであろう。
道具を使ったとしてもとても時間のかかってしまう作業であった。

さて、その効果は!

最後の写真、6弦と指板との間隔を見て頂ければ、高すぎるほど間隔がある事が判る。
確かに弦の掴みも良く、ヴィブラートもチョーキングもやりやすい。12Fの弦高が1.2oにもかかわらずだ。
では、30年の懸念事項、垂直方向のヴィブラートはどうだろう?

リッチーの弦はスプリングキャビティ脇に書かれたゲージ表示によると
10-11-13-24-36-46
と、2弦と3弦が異様に細く、他はおおよそ10-46に則っている。
その細い2弦と3弦は確かに垂直方向にヴィブラートがかかる。というか、押弦の力加減で
ピッチが不安定になってとても使いにくい。このギターを使いこなしているリッチーは、
凄く柔らかいタッチで弦を押さえている
事が簡単に想像が付く。
つまり、その押弦力の調整でヴィブラートが掛けられることは確かだ。

が、その解答には違和感がある。

垂直ヴィブラートはローフレットでは掛けられるが大した量では無い。ハイフレットは無効に近い。
しかも、これだけ弦をガッツリ掴めるセッティングで左右方向のヴィブラートがガンガンかけられるのに
垂直方向のヴィブラートを果たして使うだろうか?正直、そんな必要は無いと思う。

だから、

垂直方向ヴィブラート説は、当時まだスキャロップが手に入らない時期で、
記者が一生懸命その理由を想像して書いたものだと思う。

これで長年の疑問はスッキリした。30年前に感じていた事はやはり正しかった。
それだけでもこのギターを作った甲斐があった。



それでいい♪