トラスロッドについて

◆トラスロッドの真相とは?
いろんな方とお話をしていて、トラスロッドについて勘違いをされている方が多いので、
その効果の真相と調整方法について書いてみたいと思います。

但し、シングルアクション(棒一本のタイプ)に限定した話ですのでご注意を!

なお、トラスロッドの種類やしくみは、ここに辿り着いた方には説明不要と思いますのでこの際カットします。
他にも種々の主張はあるかと思いますが、あくまでワタシの持論です。
◆トラスロッドって実際どういうもの?
要は太い針金です。
片側をネック端で固定し、反対側でボルト等を回して締め付けて調整する。ただそれだけの事です。

◆トラスロッドって、どうやってネックの反りを直すの?
まずはこの針金を曲げてみましょう。どうなると思います?
         ・バネが強くてビヨ〜ンと戻る
         硬くて簡単には曲がらない
んて思っていませんか?いえ、思っていても不思議ではないです。実は、
トラスロッドの棒の強烈なバネの力でネックの反りを戻させる
勘違いされている方が多いんです。
これが今回のポイント!テストには出ません。
「そんなの知ってるよ!」って方は、これ以上読む必要はありません。単位終了です
だって数十kgの張力を持つ弦と、ネックを曲げる為に必要な力の合計に対抗できるバネって
凄〜いパワーが無いとムリですよね?

そんなバネってネックに仕込んだら指板やスカンクストライプが吹っ飛びますよ!
これ、メイプルワンピース用(ベース用)のトラスロッドです。これを曲げると、簡単に
こんな風に曲がっちゃうし、元に戻ろうともしません。バネ性はゼロです。

ちなみに、メイプルワンピース用トラスロッドって、あのスチューマックでも買えません。
知らない方も多いので、アップします。
左がメイプルワンピース用で、この丸いギザギザが、ヘッドにあるローズかウォールナットで作ったキャップの中に入っています。
右のトンカチの頭みたいなのが、ギブソンやフェンダーのブレットみたいな、ネックエンドを固定してヘッド側で調整するタイプ。
トンカチの頭がネックジョイント辺りに埋まっています。
 
それを仕込んだ状態がこちら。(MusikraftのHPより)
こんな感じでカーブさせています。
国内某工場を見学した際、このカーブがもっと直線的でビックリしたこともあります。

じゃあどうやって調整してるの?
弓を思い出してください。
ぎゅーっと円弧に曲がった弓、このカーブを支えているのは弦です。
この弦を伸ばしてあげたら円弧はゆるやかに、弦を短く縮めたら円弧はきつくなります。
この、弓がネック、弦がトラスロッドに相当します。
ただ、トラスロッドが円弧でセッティングされているだけです。

(ちなみに、ネックセンターよりネック裏側に仕込んでおけば、トラスロッドはストレートに仕込んでも
効果があります)

だから、ネックの反りをロッドの長さで調整する!これが真相です。
◆もうちょっと具体的な絵です。
◆トラスロッドの調整ポイント
トラスロッドは素人が直すもんじゃない!と思われてますが、私もそう思います。が、ギターのメンテくらいは自分でやらなきゃ!
って方は積極的に自己責任でトライして下さい。

基本的に極僅かな順反りが理想です(下図)、これも種々意見がありますが、図でどのポジションもきちんと弦高が確保できる
イメージが判ると思います。ビビり防止になります。
但し、ネック仕込み角が悪いとハイフレットで指板がホイップする事になってしまうので、ハイフレットだけビビリます。
12Fの弦高だけを気にして調整すると、このミスにハマります。
ネックの反り具合に加えて、ブリッジの駒調整や、最悪は仕込み角調整まで、全てバランスの取れた調整をした上で
希望の弦高を狙う事が必要なんです。

必ず守って欲しいのは、

●正しい工具を使う
   Gibson系もインチとミリの2種類、ブレットやネックエンドの六角もサイズを合わせるが、これもインチとミリがある。
   最近、ネックエンドでホイルを回すタイプもありますが、これはドライバーではムリ。曲がります。
   専用工具があれば良いのですが、オススメは六角レンチです。
●必要以上に回さない
   季節の変わり目や湿度の変化で調整する場合、
回転角はせいぜい45度程度、
  最悪でも90度まで!(1/4回転)

   
軽い順反りだったら45度くらいで収まります。
   90度以上回す必要がある様なら、ネック自体が相当弱いか、長期放置で反り放題だったか、ロッド故障か。
   いずれにしても健全ではありません。

●一気に回さない
   90度以上回すような場合は1回回してから、ネックが調整に馴染んで来るまで弦を張って置いておく。
   安定した後もさらに調整が必要か判断し、これを繰り返す。
もう一つ、
ロッドはネックの中で回りません。そう思っている方居ませんか?
ロッドは片側をガッチリ固定しているので、決して回転方向は動きません。
反りを調整する時に、極僅かにスライドするだけです。
なので、ロッド溝の中で共振しない様にキッチリ収めないといけません。
ロッドにビニールチューブを被せて共振防止をするメーカーもあります。