Relic加工はなぜ必要なのか?


まずは、なぜレリックがなぜ流行ったのか?
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@とても買えないヴィンテージギターに対する憧れ、
A古びた感じがシンプルにカッコイイから。
B憧れのアーティストが使い込んだギターがそうだから
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のいずれかが理由だろう。

少しその理由を考えると
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@は、超高額(超高級ではない)ヴィンテージギターをなんとか手に入れたい
でもそれって、偽ブランド腕時計を買って満足するのと一緒?
だったら、1954年のストラト、1959年のレスポール。当時の仕様の超リアル新品ギターがあれば良い。
でもそれは誰も喜ばない。なぜヴィンテージギターの新品状態はダメなのか?
そもそもそれはあり得ない状態だから、もしくは、使い古したギターはとても音が良いという都市伝説があるから。
要は、持っていることに誇りを感じられないからではないか?人に自慢できないからではないか?

Aは、ジーンズと同じで、使い古した感じがカッコイイから。私も穴の開いたジーンズは好きだ。
不思議なことに、この世で新品を傷だらけにして価値が上がるのはジーンズとギターだけだろう。

Bは、クラプトンのブラッキー、レイヴォーンのNo1が代表例であろう。
確かに黒いピカピカのストラトを買って「ブラッキーだぜ!」と言ってもなんの説得力もない。
やはりブラッキーと言うからには塗装の禿げたボディと黒い指板が必須条件だ。

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さらに私が個人的に想う事
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AとBについては個人の感性の話なので、何も言う事は無い。
基本的にレリック加工はしない、基本的にレリックは嫌いと言っている私が
フランケンなり、ベックのテレなり、レリックを勉強してきたのはその為だ。
価値も気持ちも充分に理解する。

だが@については問題があると思う
この状態の根本に、今のFenderとGibsonの在り方にあると思う。

60年も前の工業製品が未だに通用する、むしろ現在の新品よりも重宝される
色々な新製品が各メーカーから出るが、おおよそ60年前の延長線上だ。
流行に左右される工業製品に於いて他に例のない凄い事だ!
テレビにしても、クルマにしても、60年前のデザインが未だに主流な業界ってあるだろうか?
もはや、スパナやドライバーなどの機能に優れた「道具」と同じ扱いだ。
そんな素晴らしいデザインの工業製品を私は知らない!
流行に左右されるのではなく、流行を作る続けているのだ!
やはりストラトとレスポールの2台巨塔は歴史上最高のギターだと私は思う。

しかし、60年間もそれらを上回れる新製品を自ら作り出せないメーカーって正しいのか?
メーカーが自身の過去に出した製品を、さも使い古したかのように加工して売る姿勢は正しいのか?
今、レオフェンダー氏やレスポール氏を追い越す人材が社内に居ないのか?
セスラバーの如く、新しいピックアップを生み出せる人は居ないのか?
だから
今、カタログに載っているギターの殆どが60年前の小変更でバリエーションを増やしただけだ。
それはFenderやGibsonが頑張っていない証と私は思う。
何十ページにも亙るカタログの中身は、60年前のペラペラなカタログ以下である。
結局何を選んだら良いのかが判らないからだ。

そもそも
1954のストラトなんて当時のパートのおばちゃんが作っていた量産品だ。
超高級材を使った訳でもなく、特別な加工を施したわけでもなく、特別な技能でもない。
(それらを必要としないレオの設計能力は今でも十分通用する、ネガティブな話ではない)
今でいえば15万程度の価値しかなかったギターのはずだ。
それをメーカー自らが再現すると60万だの80万だの100万だの。なぜ??
アメスタのストラトが50年後に1000万の価値があるか??それは無理でしょ!

今現在ハイバリューなレギュラー量産ギターを適正価格で作れなくなったメーカーが
新しいレジェンドを生む事をやめ、昔の輝かしい功績にすがった。
過去の遺産に高付加価値、高利益を与え、そのためにカスタム部門を作る。
そのギターをさらにリアルに表現するためにレリック加工が施されている。

結論
普通に店で吊るしてある普及価格帯のギターでもプロがレコーディングで使える。
そんなギターを生み出すのがメーカーとしてのあるべき姿だと思う。

それができたらレリックなんて本当は必要ないはずだ!

だから今のFenderやGibsonには問題があるのだ!

私にとって本当に偉大で大好きな2大メーカーだ。
だから本当に頑張って欲しい!